志村 孚城(しむら たかき)先生のコラム

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志村 孚城先生

日本早期認知症学会 理事長。日本生体医工学会BME on Dementia研究会 会長。富士通に在籍中に、医療・福祉機器やシステムの研究開発や認知症の研究などに携わったのち、浜松市内で、デイサービスセンターを運営。実際のケアに携わりながら、認知症の研究・予防・対策に積極的に取り組んでいます。

第1回:認知症予防講座1(2012年07月12日)

私は医師ではありません。33年間に亘り医師の使う医療・福祉機器やシステムを提供する生体工学分野の研究開発に携わっている工学者です。13年前から認知症をターゲットにしていますが、その中で学んだ知識から「認知症予防」について判り易くお話をいたします。工学的センスでお話をさせていただきますのでいささか論理的に偏りがちですが、お付き合い下さい。

微笑む老夫婦

認知症高齢者は現在200万人を超え、2025年には300万人以上になると予測されています。さらに、予備軍は2倍以上あると言われています。現在、医療保険制度や介護保険制度において認知症患者に対して色々な対応がされていますが、超高齢社会が進行するほど認知症患者が増大し、国家財政を圧迫するようになるのは必至のようです。

そのような状況において、認知症に対する厚生労働省の基本的姿勢をお話します。図1の左側には健常者から徐々に認知症が重くなる様子が示されています。軽度認知症と認知症予備軍の境界に赤い点線が引かれていますが、それより下が認知症と診断された方々です。この境界はいろいろな診断方法で線引きされますが、もとになる考えは「脳機能が障害されて、社会生活や職業生活に支障をきたす段階に達する」ことです。家の中の日常生活は支障がありません。具体的な例をあげれば、社会生活として自治会の集金係を務めていて集金忘れやダブル集金をしてしまうこと、職業生活として営業を務めていて発注や注文の間違えをしてしまうと、などが発生するようになることです。

軽度認知症と診断あるいは認定されると、医療保険を用いて認知症の進行を抑制する薬物の処方を受けることが可能になりますし、介護保険では症状の程度に従い図1の右側に示すようなクラス分けがなされ、それに応じた介護サービスを受けることが可能になります。集約すると、厚生労働省は「認知症に陥ったらお世話をしますが、それ以前の予防は自治体や個人でおこなって下さい」との姿勢です。

これは、認知症に限ったことではなくて他の疾病でも同じです。皆様が健康診断を受ける時、医療保険適用外ですので高額の費用が請求されます。それに対して、例えばめまいがするなど少しでも自覚症状があれば医療保険が適用されることは良く知られていますね。認知症についてもこれと同じ考えが適用されます。最近急にもの忘れがひどくなったと心配になって、もの忘れ外来を受診する時は医療保険が適用されます。このように上手に医療機関とお付き合い下さい。

図1 認知症の程度と厚生労働省の姿勢

野に咲く花

さて、このような厚生労働省の姿勢ですので、皆様は認知症の予防について個人の努力が大切になります。これからどのようにしたら認知症にならないか、未病の認知症の進行を抑制できるかなどについてお話を展開していきます。認知症予防のワクチンはまだまったく出来ていませんので、非薬物的予防法に頼らざるをえない状況です。非薬物的予防法の結論を先に申しますが、脳血流の増加を促すことです。すなわち、脳血流を増加させて脳細胞の活性化を図ることが認知症予防に繋がる考えです。麻雀などはこれに適合している脳機能向上タスクであると私は評価していますので、楽しみながら参加していただけたらよろしいと思います。でも、無理は禁物です。


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