志村 孚城(しむら たかき)先生のコラム

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志村 孚城先生

日本早期認知症学会 理事長。日本生体医工学会BME on Dementia研究会 会長。富士通に在籍中に、医療・福祉機器やシステムの研究開発や認知症の研究などに携わったのち、浜松市内で、デイサービスセンターを運営。実際のケアに携わりながら、認知症の研究・予防・対策に積極的に取り組んでいます。

第5回:認知症予防講座5(2012年11月07日)

認知症にあらわれる障害は神経細胞群の活動に関連します。神経細胞間の伝達が阻害され認知症を呈する場合もありますが、神経細胞に栄養を送る血管が狭窄(狭くなること)・梗塞(詰まること)したり破断出血したりして神経細胞自身が損傷して認知症を呈する場合もあり、後者を脳血管性認知症と分類されています。前者に属するアルツハイマー病が認知症全体の60%程度を占めると言われていて、脳血管性認知症とレビー小体型認知症がそれに続いていると言われています。

脳血管性認知症は血管のあるところは何処でも起こる可能性があります。例えば海馬付近で血管障害がおきれば記憶障害が発生しアルツハイマー病のような症状を呈しますし、前頭前野におきれば前頭前野の機能である創造性、計画性、制御・抑制などが低下する前頭側頭型認知症のような症状を呈しますし、ブローカ領野でおきれば話すことや書くことが障害され進行性非流調性失語症などの症状を呈します。このように、血管障害がおきた場所と症状は関連が深く、症状の予測ができます。参考までに大脳皮質の部位と機能を図1に示します。

図1 大脳皮質の領域

前頭前野:人間らしい高次元の内容を処理する働き。(思考、学習、推論、創造、意欲など)
ブローカ領野:前頭前野内の領野。書いたり話したりする能力の中枢。
運動野:自分の意志で手足や眼球などを動かす随意運動を司っている。
運動連合野:行動をする時に運動野を働かせるプログラムを作り、運動野に指示する。
体性感覚野:視聴嗅味内蔵覚以外、すなわち触覚、痛覚、圧覚、温度感覚などを感知する。
側頭連合野:形や人の顔などを意味のあるものとして捉える。
頭頂連合野:視覚野から空間を認知する情報を受け、空間的位置関係や向き等を認識する。
後頭連合野:視覚野に入った情報を分析・統合し見ている者を認識する働きをする。

以上述べたように脳血管認知症は「このような症状を呈する」と言えませんが、他の認知症と異なりかなり急激な症状の変化が出現します。もし脳機能の急な変化や疼痛を感じたら、直ぐに医師に症状を説明してX線CT検査を受けて下さい。脳梗塞や脳出血があるか、その場所はどこかが判りますので、症状と合わせて診断が確実になります。さらに、脳梗塞や脳出血の薬物による治療は初期の段階ではほぼ確実にできますので、安心して診断をうけて下さい。

紅葉

次に予防の方法についてお話します。

脳血管性認知症は脳血管の障害に起因するので、循環器系疾患予防方法と全く同じだと考えて下さい。血管を弾力のあるいきいきとした状態に保ち、血管内に沈着物が生じないようにすることが予防の基本的考えです。このためには、もし高血圧症、高脂血症、糖尿病、心臓関連諸疾患などの循環器系疾病がある場合は医師の指示を受けて十分な治療に努めて下さい。また、予防としては、高蛋白の摂取、脂肪摂取の制限など食事に気を付けることや、適度な運動負荷を与えることが効果的であると言われています。


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