志村 孚城(しむら たかき)先生のコラム

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志村 孚城先生

日本早期認知症学会 理事長。日本生体医工学会BME on Dementia研究会 会長。富士通に在籍中に、医療・福祉機器やシステムの研究開発や認知症の研究などに携わったのち、浜松市内で、デイサービスセンターを運営。実際のケアに携わりながら、認知症の研究・予防・対策に積極的に取り組んでいます。

第6回:認知症予防講座6(2013年06月19日)

2000年前後から、アルツハイマー病のアルツハイマー(Alois Alzheimer)博士、ピック病のピック(Arnold Pick)博士など認知症の病態・病理の解明の中心になったのは外国の医学者達でした。小阪憲司先生らは、1976年以降レビー小体型認知症(DLB: dementia with Lewy bodies)の基礎となる一連の研究報告を国際的に発表し続け、それがきっかけとなって徐々に国際的な認知を得、1996年になってやっと最も権威のある雑誌(Neurology)に名称、病理診断基準が掲載されるに至りました。その後、病態・病理の研究はますます国際的に広がり、臨床的にもアルツハイマー病、脳血管性認知症の次に多い認知症として重要視されてきています。レビー小体型認知症は日本人が病態・病理の確立の中心となった認知症です。

今回は、レビー小体型認知症についてお話していきます。

レビー小体が神経細胞死を引き起こすことが明らかになっています。レビー小体は始めパーキンソン病(PD: Parkinson’s disease)で発見された異常物質ですが、認知症を伴うパーキンソン病(PDD: Parkinson’s disease with dementia)やパーキンソン病とは異なるレビー小体型認知症にも存在します。これらの3疾患をレビー小体疾患(LBD: Lewy body disease)と総称することが推奨されています。

空と海

さて、次にレビー小体型認知症の初期症状についてご紹介します。

レビー小体型認知症の中心的特徴は進行性の認知障害です。認知機能低下は記憶障害で始まりますが、アルツハイマー病より程度は軽いと言われています。その他、アルツハイマー病と比べて、遂行能力、問題解決能力の低下、注意力の障害などの前頭葉機能障害、および視空間障害などの頭頂葉障害の症状がつよいことも特徴であると言われています。このため、認知症の機能検査として国際的に広く用いられているMMSE(Mini-Mental State Examination)では比較的高いスコアを示すにもかかわらず社会生活、職業生活で問題を起こすようになります。また、初期にこれらの認知機能の変動(数分から数時間の日内変動、あるいは数週から数カ月におよぶ変動)が起きますので、回復したと見過ごしてしまうことに注意しましょう。

繰り返し現れる幻視もレビー小体型認知症の特徴です。典型的な幻視としては、人間、小動物、虫などが挙げられています。レビー小体型認知症の場合は、後で見た内容を家族などに詳細に説明出来ることが特徴的であると言われています。

また、パーキンソン病によくみられる手足のふるえ、筋肉のこわばり、歩行障害などの症状をパーキンソニズムと言いますが、この症状を呈する場合がかなりあります。しかし、パーキンソニズムのないレビー小体型認知症があることやレビー小体型認知症以外の認知症でもパーキンソニズムが現れることが、臨床診断を複雑にしています。

レビー小体型認知症の初発症状を表1に示します。

表1 レビー小体型認知症の初期症状
(認知症テキストブック日本認知症学会編より)

以上述べたように、レビー小体型認知症については、初期症状から色々な切り口で調査研究がおこなわれ報告がされていますが、残念ながら予防方法については未だ確立されたものはありません。しかし、これらの症状に気づいたら、すみやかに医師の診断を受けて下さい。治療方法としては、レビー小体を消滅させるような根本的治療方法は存在せず、現れる様々な臨床症状に対する対症的治療に留まっています。

薬物療法としては、認知障害、幻視・行動異常を伴う精神症状、うつ症状、パーキンソン症状などに対してそれぞれ異なる薬物が使われています。実際はそれらを試行錯誤的に組み合わせて、症状の改善を見定めながら生活の質を確保していくことになります。この時、生活環境の整備やケア方法も薬物の効果を促進する働きがあると言われていますので、早い段階から心がやすらぐケアを提供してくれる施設に通うことをお勧めします。


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